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掌の砂、流れる雲、それから。

掌の砂、流れる雲、それから。

酒場ごっこ 

酒場ごっこ by.hiroki-mabuchi


僕の部屋の隅にはとっておきのルーム・バーがある

一枚板のカウンターに足の長い椅子を並べてさ
マドラからシェイカーまで一通り揃えてあるし 革のコースターにクリスタルで出す
自慢の長い酒棚にはたくさんのかたちの良いボトルが背比べしてる
もちろんアイスピックを使ってしゃんとしたかき割り氷を浮かべたりするよ
金がなくて酒場代わりにここへくる奴もいるけど 別にどうってことないね

ねえ 君もよければ僕のこの店に遊びに来ないか?
ただし 条件があるんだ たいしたことじゃないけど
僕を必ず感心させる話題をひとつ持って来て欲しい 何だって構やしないさ
まあ これはいわゆるアドミッション・フィーと言ったところだな

この近くにね 昔からの友人がいるんだけど
こいつが太っ腹な奴でいつもその手の話を三つ用意してくるんだ
来る度に三つもだぜ そのうちの大半は作り話だろうけど…
でも僕はそのたびに嬉しくなっちゃってさ
タンカレーにライムを搾って奴に浴びるほど御馳走してやるんだ
A・C・ジョビンなんかを聞かせたりしながらね

メニューなんかもいろいろで その季節に合わせたカクテルなんかも作っちゃうんだ
オレンジやバナナ乗せたり… ご機嫌だろ?

君も良ければ僕のこの店に遊びに来ないか?
僕が精一杯のホスト役を務め 君が酒場好きの酔っ払いを演じる
こんな素敵なことはないよ きっと

君に会えることを楽しみにしているよ  バー・オーナー

P.S.
くれぐれも感心させる話を持参する事を忘れずに



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